今回は関東圏から程近い群馬県の碓氷峠(うすいとうげ)から「アプトの道」をご紹介します。この碓氷峠といえばJR線で最も急角度であった勾配を擁することで大変有名です。路線としては1997年の北陸新幹線長野暫定開業と引き換えに廃線となった信越本線横川(よこかわ)〜軽井沢間が該当し、専用の機関車を用いなければならないため運行上でも屈指の難所でございました。
そんな重要な歴史を持つ線路を野晒しにはできないと遊歩道として整備されたのがアプトの道です。「アプト(式)」とは車両が急勾配を登るために歯車をラックに嚙み合わせることで推進力を増強する方法のことで、碓氷峠では1963年までこの方法が用いられました。以降廃止まで補助機関車以外は通常と同様の方式で運行されましたが、その特徴ある運行システムは横川駅近くの“碓氷峠鉄道文化むら”にて実物を交え深く知ることができます。
アプトの道は一部を除き、廃線となった区間に沿って続いていきます。傷みはあるものの信号機や標識も残され、さらには実際に使われていたトンネルを通る区間もあり、鉄道がこの地に存在したことを雄弁に語りかけてきます。またレンガ造りの建物が目を引く丸山変電所跡や山中の静かな雰囲気が心地よい碓氷湖など、定期的に見どころが現れ退屈しないのもアプトの道の特徴と言えます。
中でも私のおすすめはこの「峠の湯」です。起点である横川駅から約3km歩いたところで見えてくる日帰り入浴施設ですが、歩いた後に天然温泉で疲れを癒すひとときの心地よさは筆舌に尽くしがたいものです。もちろん食事や休憩の場としても使うことができ、当地観光の拠点として是非お立ち寄りいただきたい場所です。
今回はここまでです。次回もよろしくお願いいたします。
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